この記事では、漢文の参考書・問題集「漢文早覚え速答法」について、現役予備校講師で私立進学校の国語科教科リーダーを務めた私が、その特徴、効率のよい使い方など、徹底的に解説をしていきます。
「漢文早覚え速答法」とは
・概要:漢文でできる限り効率よく点数を取ることを目的とした参考書・問題集
・著者、出版社:田中雄二、大学受験VBOOKS(学研)
・目安となるレベル、偏差値:共通テスト対策、私立大学対策、国公立大学二次試験の土台作り(偏差値45~60)
・講数:全14講+問題編(全288ページ)
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「漢文早覚え速答法」のレベル、難易度
「漢文早覚え速答法」は、上述の通り、「いかにして効率的に漢文の試験で点数を取れるようになるか」を焦点とした参考書、問題集です。
できる限り情報量を少なくし、試験に頻出の項目だけを徹底的に学ぶことで、最短距離で共通テスト、私立大学の漢文の試験でそこそこの点数が取れるように設計されています。
また、受験テクニックが多いのも本書の特徴です。多少真実を捻じ曲げてでも、受験生が効率よく学ぶことのできる内容であれば、「漢文早覚え速答法」ではそれを「公式」として紹介しています。
そういった性質上、すでに漢文の学習をはじめている、あるいは漢文が得意な人からすれば、とんちんかんに感じられる内容も多く含まれていますが、逆に全く勉強をしてこなかった、もしくは苦手で苦手でたまらないといった人にとっては、最短経路で駆け上がることのできる「裏ワザ攻略本」のような存在になると思います。
レビュー・口コミでも「非常に効率よく学習することができた」という意見がある反面、「自分には合わなかった」という意見も見られました。漢文の初学者向けの参考書とはいえ、「レ点」だったり「置字」といった初歩の初歩の内容はこの「漢文早覚え速答法」では省かれているため、学校ですら一回も漢文の授業を受けてこなかったという人には難しく感じられるのかもしれません。
レベルとしては共通テスト〜一般的な私立大学の漢文までになります。とはいえ、私立大学で漢文を出題する学校は早稲田大学、上智大学のほか、首都圏ではGMARCHクラスの文学部ぐらいで、それよりも難易度の低い大学ではほとんど出題が見られません。
また、出題難易度も大学によってまちまちで、たとえば明治大学の文学部の漢文は非常に短く基本的な内容の出題が多いのに対し、國學院大学の文学部の漢文は非常に長く、難易度もそこそこ高かったりします。
漢文の対策は、偏差値で判断するのではなく、実際に出題されている問題の難易度をみて、どこまで学習しなければならないのかを判断する必要があるということを念頭においてもらえればと思います。
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「漢文早覚え速答法」と「漢文ヤマのヤマ」の違い
どちらも昔から大学受験の参考書としての評価が高く、よく比較される二冊ですが、その違いはさほどありません。
どちらも見やすいレイアウト、飽きにくいカラーリング、そして頭に入ってきやすい語りかけるような解説であり、特に苦手な人をターゲットにしています。
「漢文早覚え速答法」は初歩の初歩の内容が入っていない分、裏技的な受験テクニックの内容が多いのに対し、「漢文ヤマのヤマ」は「漢文早覚え速答法」ではカットされていた初歩の初歩の内容を手厚く扱う反面、受験テクニック的な知識には「漢文早覚え速答法」ほど詳しくありません。
どちらも参考書のレベルとしては同じようなものではありますが、上述のスタートラインの違いや受験テクニック的なものに対する感じ方によって、こっちが向いている、あっちのほうがいいといった違いはあるかもしれません。
しっかりとやり切った場合の結果は大差ありませんので、本屋で両者を比べて自分に向いている方を選ぶのでもいいと思います。
私個人としては、
・「レ点」「置字」などに自信がない人→漢文ヤマのヤマ
・「レ点」「置字」などはわかるが、漢文の勉強に苦手意識が強い人→漢文早覚え速答法
をおすすめします。
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「漢文早覚え速答法」の使い方
ここからは、具体的に「漢文早覚え速答法」をどのように利用していくべきかを解説していきます。
・今まで漢文の勉強をまったくやって来ず、これから始めようと思っている人は
上述した通り、「漢文早覚え速答法」には初歩の初歩(レ点や置字など)の情報は省略されてしまっています。もしそれらに自信がない場合は、「漢文早覚え速答法」に着手する前に、別の参考書でその内容を補う必要があります。
おすすめは「ステップアップノート 漢文句形ドリルと演習 」(河合出版)です。ドリル形式の問題集で、基礎的な学習に用いられるほか、実際に「漢文早覚え速答法」に着手したあとでも句形の演習問題として活用できます。
・初歩の初歩はわかっている人、⓪で初歩の初歩を学習済みの人は
「漢文早覚え速答法」のメインコンテンツである、「公式」の学習に取り掛かってください。各章ごとに「公式」の解説ののち、練習問題が付属しています。前から読み物として読みながら、問題を解いていくだけで、
解説を読む→練習問題を解く→その解説を読む
と無理なく知識を吸収できるようになっています。
基本的には読みながら練習問題を解くだけで理解できるような構成になっていますが、より深い理解を得たかったり、一度でしっかりと覚えたい人は、出てくる漢文をノートに書き写し、その書き下し文、現代語訳を別に作成すると非常に効果が高いです。
知識は覚えただけでは完全ではなく、その使い方をしっかりと練習して初めて自分のものにすることができます。ちょうど覚えたばかりの句形であったり「公式」であったりを「書き下し→現代語訳」の流れの中ですぐに活用する練習ができるので、非常におすすめです。
一通りすべての「公式」の学習が完了したら、付属している「共通テスト攻略マニュアル+私大、記述対策」に取り組んでもよいと思います。ただ、後述しますが、ある程度の基礎が身についた後は、実際の共通テスト・センター試験の過去問だったり、私大の入試問題に取り組んだほうが良い場合もありますので、そこは自分の志望する大学の漢文の問題を見て決めるとよいと思います。
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・句形や「公式」の学習が終わった後は
ここが「漢文早覚え速答法」のもっとも大事なポイントになります。
実は「漢文早覚え速答法」には巻末の付録に「暗唱例文」が付属しています。これは大学受験に必要な句形だったり、読みや意味を知っておかなければならない単語をふんだんに盛り込んだ、本書オリジナルの漢文です。
この漢文を書き下し、現代語訳できるという状態であれば、受験に頻出の基本的な漢文知識はあらかたマスターできているということになります。
「漢文早覚え速答法」の解説文には「暗唱する」ことを推奨していますが、丸暗記まではする必要はありません。
定期的に「書き下し→現代語訳」を作り、忘れてしまった知識がないか確認すること、これがこの「暗唱例文」の最も有効な使い方だと考えています。
はじめは二週間に一度、できるようになったら一ケ月に一度、そして受験の直前に確認をし、できていないところを前半の「公式」解説パートで復習をします。
非常に効率よく、穴なく知識の総ざらいができるため、この「暗唱例文」の存在だけでも「漢文早覚え速答法」は購入する価値があります。事実、私が漢文を教えていた際には、この「暗唱例文」で総復習をさせるためだけに「漢文早覚え速答法」の購入を強く進めていました。
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「漢文早覚え速答法」が終わったら次は
「漢文早覚え速答法」は入門~受験に対応した参考書・問題集ではありますが、丁寧な解説がその大部分をしめているため、問題演習量はさほどではありません。
また、国公立大学の二次試験や、早大や上智大などの難関私立大学の受験を視野に入れている場合は、解き方や知識量に不安が残ります。上述の通り、私立大学の漢文はその大学によって漢文の難易度(言い換えれば「出題傾向」)がまちまちですので、大学ごとに勉強方法を変えていく必要があります。
そこで、「漢文早覚え速答法」をマスターした後にするおすすめの内容を志望校別にまとめておきます。
・共通テストが最終目標の人
共通テスト向けの漢文の問題集、共通テストの過去問(赤本、黒本、青本)、各予備校の共通テスト予想問題集(Z会:共通テスト実戦模試、河合出版:マーク式総合問題集、駿台:共通テスト対策問題集など)
・国公立二次試験(東大、旧帝大含む)が最終目標の人
河合出版「得点奪取 漢文」、各大学の過去問(赤本)の書下し、現代語訳
※国公立大学の二次試験は、東大や旧帝大を含め、ほとんどの問題で「現代語訳」を要求してきます。付された問題が解けるか解けないかも勿論大切ですが、問題になっていない箇所の「書下し+現代語訳」ができるように勉強しておくことも大切です。
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・難関私立大学(早稲田大学の文系学部、上智大学の文系学部、GMARCHの文学部等)が最終目標の人
各大学の赤本(早稲田であれば教学社「早稲田の国語」もあり)、河合出版「入試精選問題集 漢文」、Z会「漢文道場 入門から実践まで」
ただし、大学ごとに出題傾向が大きく異なるため、各大学の赤本で自分の受ける大学の漢文のだいたいの試験形式を知った上で、各種問題集に取り組むのがおすすめです。
以上に加え、上述した「漢文早覚え速答法」の「暗唱例文」を書き下し、現代語訳することで定期的な知識の総復習をすることも忘れないでください。